要点
- デジタル入国カードは渡航前の申告であってビザではなく、通常はそれだけで入国が認められるわけではありません。
- 必要かどうかは、国籍ではなく渡航先によって決まります。
- 世界の多くの国が、機内で配られていた紙のカードを、出発前に提出するオンラインフォームに切り替えています。
- 航空会社の中には、フォームの提出を確認してから搭乗を認めるところも出てきています。
国連世界観光機関(UN Tourism)によると、2025年の国際観光旅行は15億2,000万回を超え、過去最高を記録しました。世界の旅行が拡大を続けるなか、旅の一部が静かに変わりつつあります。それが書類の手続きです。アジア各地では、かつて機内で配られていた紙の入国カードが、旅行者が搭乗前に済ませるデジタルの申告に置き換えられています。国によっては、航空会社がこうしたフォームを確認してからでないと、搭乗さえ認められません。
デジタル入国カードはビザに代わるものではありませんが、海外旅行に欠かせないものになっています。国境管理のペーパーレス化を進める国が増えるなか、旅行者は、どの渡航先で必要なのか、いつ提出するのか、どんなミスを避けるべきかを知っておく必要があります。
このガイドでは、2026年に必要になるデジタル入国カード、必要な人、その仕組みを紹介します。要件は渡航先や国籍によって異なるため、渡航前に必ず最新の公式情報を確認してください。
入国カードとは
入国カードとは、パスポートには載っていない情報を入国管理当局が集めるための短いフォームです。ビザではなく、入国を保証するものでもありません。最終的な判断は渡航先の国境職員が行います。ほとんどの国では、入国カードに加えて、適切なビザまたはビザ免除の資格が引き続き必要です。
ほぼどの国にも共通する点がいくつかあります。フォームは通常、到着前72時間以内に提出します。提出すると、保存しておくべきQRコードまたはPDFの確認書が届きます。乳幼児や子どもを含め、乗客一人ひとりが自分の入国カードを用意することが大切です。これを踏まえて、国ごとの仕組みを見ていきましょう。
ベトナム - デジタル入国カード(VDAC)
- 必要な人:これまでに対象となった空港に空路で到着する外国人旅行者。提出は義務ではなく、現時点では推奨にとどまります。
- 提出のタイミング:到着予定日の3日前から提出できます。
- 知っておきたいこと:ベトナムのデジタル入国カードは、政府が事前入国情報(PAI)システムとして運用しているもので、2026年4月15日にホーチミン市のタンソンニャット空港で試験的に始まり、現在はフーコック、ハノイのノイバイ、ダナン、カムラン(ニャチャン)の各空港も対象になっています。公安省は、この仕組みを全国に広げる方針を明らかにしており、陸路の国境向けの仕組みも検討しています。提出は今も任意ですが、提出した旅行者にはメールでQRコードが届き、入国審査をスムーズに通過できます。
ビザではないため、旅客には引き続き有効なベトナムのビザ、e-Visa、またはビザ免除の資格が必要です。提出する場合は、1回の入国のみ有効で、子どもを含め乗客一人ひとりが自分の分を用意します。
詳しくはこちら:ベトナム デジタル入国カード
タイ - デジタル入国カード(TDAC)
- 必要な人:空路、陸路、海路で到着するタイ国籍以外のすべての人(ビザが不要な旅客を含む)。
- 提出のタイミング:到着前72時間以内。
- 知っておきたいこと:TDACは従来の紙のTM6カードに代わるもので、TM6はもうどこでも受け付けられていません。入国審査で提示するQRコードの確認書が届きます。カードは1回の入国のみ有効なので、渡航のたびに新しく提出する必要があります。乗り継ぎのみで入国審査を通らない場合は、通常は不要です。
申請が滞るよくある原因は、パスポート番号の不一致、パスポートと完全には一致しない氏名、到着日の誤りです。
詳しくはこちら:タイ デジタル入国カード
シンガポール - SG入国カード(SGAC)
- 必要な人:空路、陸路、海路で到着するほぼすべての外国人訪問者(ビザ不要の人を含む)。
- 提出のタイミング:到着日を含む到着前3日以内。
- 知っておきたいこと:SGACは電子健康申告も兼ねており、航空会社が搭乗前にゲートで確認します。提出していないと、搭乗を認められない場合があります。カードはパスポートに紐付けられているため、到着時にパスポートをスキャンすると入国管理当局が確認できます。1回の入国のみ有効で出国時に失効するため、訪問のたびに新しく提出する必要があります。
空港の乗り継ぎエリア内にとどまる旅客は、通常は不要です。
詳しくはこちら:シンガポール SG入国カード
マレーシア - デジタル入国カード(MDAC)
- 必要な人:空路、陸路、海路で到着するほとんどの外国人訪問者(ジョホール・シンガポール・コーズウェイなどの陸路での越境を含む)。
- 提出のタイミング:到着前3日以内
- 知っておきたいこと:MDACはビザではありません。国籍によっては、引き続きビザが必要な場合も、ビザなし入国の対象になる場合もあります。シンガポール国民、外交・公用旅券の所持者、マレーシアの永住者、長期滞在パスの所持者、一部の国境通行証の所持者など、免除される人もいます。
1回の入国のみ有効です。到着前に提出し忘れた場合は、入国審査の列に並ぶ前にスマートフォンで記入しなければならないこともあります。
詳しくはこちら:マレーシア デジタル入国カード
インド - e-Arrivalカード
- 必要な人:すべての外国人旅行者とOCI(インド海外市民)カードの所持者。インドのパスポート所持者は免除されます。
- 提出のタイミング:到着前72時間以内。
- 知っておきたいこと:インドのe-Arrivalカードは、1960年代から機内で使われてきた紙の入国カードに代わるものです。現在では、一部の港や陸路の国境でも必要です。ビザに代わるものではありません。
旅行者には引き続き、有効なeVisa、紙のビザ、またはOCIカードが必要です。同じ便で一緒に旅行し、同じ住所に滞在する家族は、多くの場合、まとめて申請(最大5人)でき、1つの共通のQRコードが発行されます。確認書は発行されたらすぐに保存しましょう。
見落としがちな2つ目のフォームもあります。2026年6月からは、空路でインドに到着するすべての人が、Air Suvidhaの健康自己申告も提出しなければなりません。これは入国カードとは別のフォームで、入国管理局ではなく民間航空省が運営しており、WHOが2026年5月に公衆衛生上の緊急事態を宣言したエボラ出血熱の流行を受けて導入されたものです。どちらも到着の72時間前から提出でき、一方を済ませてももう一方の代わりにはなりません。e-Arrivalカードとは異なり、こちらはインドのパスポート所持者も免除されず、乗務員を含め空路で到着するすべての人に適用されます。
詳しくはこちら:インド e-Arrivalカード
フィリピン - eTravel登録
- 必要な人:フィリピンに入国または出国するすべての人(フィリピン国民と子どもを含む)。
- 提出のタイミング:フライトの72時間前以内。
- 知っておきたいこと:フィリピンのeTravelシステムは、空路または海路での到着者向けに、入国カード、健康申告、税関申告を1つの登録にまとめたものです。提出するとQRコードが届きます。緑のコードならエクスプレスレーンを利用でき、赤のコードは到着時に係官による確認があるというだけです。どちらのコードでも渡航できます。
入国時と出国時の両方で必要で、1回ごとに有効なため、往路・復路それぞれで新しく登録する必要があります。ビザではないため、国籍がビザ免除の対象でない場合は、引き続き適切なフィリピンのビザが必要です。
詳しくはこちら:フィリピンeTravel登録
韓国 - e-Arrivalカード
- 必要な人:ほとんどの外国人旅行者。有効なK-ETA(韓国電子渡航認証)を持っている人は免除されます。
- 提出のタイミング:到着前72時間以内。
- 知っておきたいこと:韓国は2025年にe-Arrivalカードを導入しましたが、紙の入国カードがなくなったわけではありません。韓国法務部は2026年3月、両方の形式が引き続き併用されていることを明らかにしており、紙のカードを廃止する時期は発表されていません。ビザ免除国の国民は、K-ETAを使うか、入国のたびに必要なe-Arrivalカードに記入するかを選べます。
カードはパスポートに紐付けられているため、持ち歩く書類はありませんが、確認書の控えを保存しておくと安心です。1回の入国のみ有効なので、頻繁に訪れる人は、長期間にわたって数次入国に対応するK-ETAを選ぶことが多いです。
詳しくはこちら:韓国 e-Arrivalカード
台湾 - 入国カード(TWAC)
- 必要な人:居留証を持たないすべての外国人訪問者(ビザ免除の旅客と訪問ビザの所持者を含む)。
- 提出のタイミング:到着前7日以内。台湾は2026年6月に、提出できる期間を3日から7日に広げました。
- 知っておきたいこと:TWACは台湾の紙の入国カードに代わるものです。オンラインで提出すると、QRコードの確認書が届きます。入国管理当局は通常、パスポートのスキャンで情報を確認できますが、控えを保存しておくのがおすすめです。着陸前に記入していない場合は、入国審査の列に並ぶ前に空港の端末で手続きする必要があります。
ほかの国と同様に乗客一人ひとりに必要で、国際線の乗り継ぎエリア内にとどまる旅客は通常は不要です。
詳しくはこちら:台湾 入国カード
インドネシア - All Indonesia入国カード
- 必要な人:すべての国際線の到着者。
- 提出のタイミング:到着前72時間以内。
- 知っておきたいこと:インドネシアのAll Indonesiaプラットフォームは、入国、税関、健康、検疫の申告を1つのフォームにまとめ、いくつもの別々の書類に代わるものです。入国審査と税関で提示するQRコードが届きます。ビザではないため、入国するには引き続き、有効なインドネシアのビザ、承認済みの到着ビザ、またはビザ免除の資格が必要です。
- 詳しくはこちら:インドネシア 入国カード
中国 - デジタル入国カード(CDAC)
- 必要な人:空路、陸路、海路で入国するすべての外国人旅客(未成年者を含む。未成年者は親または保護者の申請に追加できます)。
- 提出のタイミング:出発前にオンラインで。確認はすぐに届きます。
- 知っておきたいこと:中国のデジタル入国カードは、入国申告と税関申告をまとめたものです。ビザではないため、中国へのビザが必要な場合は、そちらも取得しておく必要があります。到着時には、パスポートと確認書またはPDFを入国審査官に提示します。
到着日から30日間有効で、1回の入国のみ有効なため、訪問のたびに新しく提出する必要があります。事前に済ませ忘れた場合も、通常は到着時に手続きできますが、事前に済ませておくほうが簡単です。
詳しくはこちら:中国 入国カード
ほかの国の状況
上の一覧は旅行者からの問い合わせが特に多い入国カードをまとめたものですが、ほかの国も同じ方向に進んでいます。ニュージーランドでは現在、ニュージーランド渡航者申告書(NZTD)が必要です。旅行開始の24時間前から提出でき、入国審査(パスポートコントロール)までに済ませる必要があります。カンボジアでは、入国、税関、健康をまとめたオンラインフォームを使っています。開始日やルールは変わることがあるため、渡航前に改めて確認することが大切です。
2026年にはカリブ海の国もこの流れに加わりました。トリニダード・トバゴは3月17日に紙のD/Eカードを廃止し、現在はすべての旅客にトリニダード・トバゴのオンライン入国カードをオンラインで提出するよう求めています。特に取り上げる理由は、往復の旅行では提出が1回ではなく2回必要になるためです。入国カードと出国カードがそれぞれ必要で、どちらにもQRコード付きの受領証が発行されますが、2回目の提出が必要であることについて政府からの案内はありません。
すべての国がデジタルに切り替えたわけではありません。オーストラリアは移行の途中にあり、到着客の多くは今も、税関と検疫のために着陸前に配られる紙の入国旅客カードに記入しています。2026年7月、政府はオーストラリア渡航申告書(Australia Travel Declaration)を12〜18か月以内にすべての国際空港と港に広げるための予算を確保しました。それまでの間、デジタルのフォームを使えるのは、ブリスベン、シドニー、メルボルンに到着する対象のカンタス航空の旅客だけで、出発の72時間前から同航空会社のアプリで提出します。パースとアデレードも2026年末までに加わる予定です。日本では、多くの旅客が別のカードを使う代わりに、Visit Japanのシステムで入国と税関の情報をオンラインで事前に入力できます。アメリカやカナダなど一部の国は入国カードの使用をやめ、現在はパスポートのスキャンと電子渡航認証に頼っています。流れはデジタル化に向かっており、切り替える国はさらに増えるでしょう。
南アフリカは2026年7月、同じ考え方を税関に取り入れました。SARS旅行者申告が、すべての入国地点で、同国に入国または出国するすべての人に義務付けられたのです。上の入国カードと異なる点は2つあります。入国時だけでなく出国時にも必要なこと、そして出発前の24時間以内にしか提出できないこと(入国の場合は、南アフリカへ向かう最終区間の出発前)です。
ラオスも2025年9月にラオス デジタル出入国フォームで同じ方向に動き、ほとんどの国よりも一歩踏み込みました。入国時だけでなく出国時にも登録が必要で、提出できる期間はわずか3日間です。開始時点では、3つの国際空港と第1タイ・ラオス友好橋の4か所の検問所が対象で、それ以外の場所から越境する旅行者には今も紙の用紙が配られます。
日本はその対極にあります。入国手続きは義務ですが、オンラインでの手続きは義務ではありません。日本 入国カードは、入国カードと税関申告を1つのQRコードにまとめたもので(免税購入の登録には別のQRコードがあります)、航空会社では今も紙の用紙が配られることが多く、到着時にはいつでも入手できます。デジタルで入国を制限するのではなく、デジタルで便利にするという考え方です。
旅客がつまずきやすいポイント
iVisaでは、入国カードについて、同じようなパターンが何度も見られます。
- 提出できる期間は厳格:多くの国では到着の72時間前から提出できますが、台湾は7日前から可能です。早すぎると、システムがフォームを受け付けないことがあります。遅すぎると、搭乗を断られる可能性があります。タイミングは、多くの旅客が思っている以上に厳密です。
- 紙のフォームは過去のもの:ほとんどの国で、機内で入国カードが配られることはもうありません。ただし、着陸後に端末やスマートフォンでデジタルのフォームに記入することはできます。その場合、別の遅い列に並ぶことになりがちです。また、提出を済ませていないと搭乗させない航空会社も増えている点に注意しましょう。
- 子どもを含め、一人ひとりに入国カードが必要:ほとんどの国には家族単位のフォームがないため(インドの一部家族向けのオプションを除く)、自分の分だけ記入して、うっかり子どもの分を忘れてしまいがちです。
より大きな流れ
入国カードは小さな変化に見えるかもしれませんが、より大きな変化の一部です。フォームの記入、列に並ぶこと、スタンプを押してもらうことなど、かつて空港で行っていた手続きが、今ではオンラインに移り、出発前に済ませるものになっています。パスポートに紐付けられ、航空会社がゲートで確認し、複数のフォームを1つにまとめたデジタル申告へと向かう流れです。この動きに加わる国は今後さらに増え、機内でフォームに記入する時代は終わりつつあります。
旅行者にとっては、旅の計画の立て方が変わります。入国カードは、着陸後に対応するものではなく、座席の予約やパスポートの有効期限の確認と並んで、出発前のチェックリストに入れておくべきものになりました。



